『田園の詩』NO.26  「花粉症今昔」 (1995.3.21)


 また、花粉症の季節がやって来ました。2月中旬ころから始まり、桜の咲くころまで、
≪くしゃみ、鼻水、目のかゆみ≫の3点セットに悩まされます。今年は、杉の花粉の量
がとくに多く、本堂の濡れ縁などを、ぞうきん掛けしたら、黄色く染まってしまうほど
です。

 子供の時は、花粉症なんてなかったように思います。今ごろ、小学校では≪お別れ
遠足≫があります。私たちの時代は、野山を歩き回るだけの遠足でしたが、そんな折、
道に転がる石を杉の枝に投げつけて、花粉を舞い立たせる競争をしたものでした。
それでもなんともありませんでした。

 どうして最近、花粉症になる人が増えたのでしょうか。原因はいろいろ言われてい
ますが、その中に、こんなのがありました。

 私たちの体の中には、病原菌や大きな異物などが入ってきたら、それと戦う抗体
があるそうです。たとえば、この抗体は回虫が入ってきたら、戦うとともに、下痢を
おこさせ、速やかに外に排泄させます。

 ところが、現在、回虫などは環境の改善や薬によって激減したので、この抗体は
戦う相手がいなくなった。そこで、これまでは見向きもしなかった小さな侵入異物、
つまり杉の花粉を相手にするようになった。その結果、いわゆる3点セットの症状
が出てくるというものです。

 人間の体の素晴らしいメカニズムには感心しますが、律儀に働き続ける抗体には
苦笑せざるをえません。

 ところで、友だち家族を呼んで食事会をした時のことです。友人が、「野菜がと
てもおいしい」というので、「わが家のは、無農薬で有機肥料だから」と説明しまし
た。そしたら、「有機肥料とは、アレですか?」と、さも聞きにくそうに尋ねられま
した。


      
     工房横の畑に、4月初旬に蒔いた野菜が、すくすく育ちました。サニーレタス、
     シシトウ、ダイコン、キュウリなどです。野菜は豊作の時は、完全自給できるばかりか、
     おすそ分けもできてます。
       (08.6.14写)


 「いえいえ、昔のようなことはしません。油かすや完全発酵した鶏糞などを、種まき
の一ヶ月くらい前に畑の土に鋤き込んで、野菜を育てます。」と答えたら、安心した
みたいでした。

 昔風だったら、花粉症にならずにすんだかもしれない、と複雑な気持ちです。
                               (住職・筆工)

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